《総評》
今年度の東大地理は、見慣れないデータから既存の知識を組み合わせて解答をつくる、いかにも東大らしい問題であり、例年通りの分量・難易度であった。しかし、昨年度の問題が例年より難しかったことを鑑みると、昨年度よりも分量が減り、やや易化したといえる。また、今年度は自然環境に関わる問題が多く、大問1設問A(5)のような日本の特定地域の気候を問うものもあった。加えて、PM2.5やリーマンショック以降の製造業の変遷についての問いが出題されるなど、近年の時事の知識を問う問題もあった。
地形図の出題はなかった。地形図の問題は2009年以降、隔年ペースで出題されているため、対策を怠らないようにしたい。

第1問
《講評》
島と海をテーマに出題された。地球の構造や気象など、地学的な要素を含む出題が目立ち、例年より自然環境についての出題が多かったといえる。基本的な内容ではあるものの、必ずしも聞かれやすい分野ではないため、スムーズに解答できなかった受験生もいたであろう。設問B(3)は多様な解答が考えられ、受験生の思考力を問う東大らしい問題であった。
《分野》
大地形、気候、人口、国際援助、国家、日本地誌、小地形、産業
《難易度》
標準★★★☆☆

《解答》
設問A
(1)火山島やサンゴ礁島が、北西に動く太平洋プレート上や南東から北西に伸びるプレート境界上にあるため。
(2)大消費地が遠く、人口や産業用地が少ない上、インフラ整備が進んでいないため、産業の高度化が進まず、所得が低いから。
(3)領海は海岸から12海里の海域で国家の主権が及び、他国船の航行が制限されるが、排他的経済水域は海岸から200海里の海域で他国船の航行は自由だが、沿岸国に資源や環境保護の管轄権がある。
(4)a…南鳥島、b…沖ノ鳥島
(5)小笠原気団が卓越しているため、台風の直撃が少なく、梅雨前線が小笠原諸島の北で発生することが多いので梅雨がないため。

設問B
(1)a…赤道、b…南回帰線、c…北極線
(2)U字谷が沈降し、狭く奥深い入江であるフィヨルドがみられる。
(3)a島は新期造山帯なので油田開発が行われ、熱帯気候を生かしパーム油生産が盛んであるが、b島は安定陸塊なのでレアメタルが豊富に採掘され、乾季がある地域が多くコーヒー生産も盛んである。

第2問
《講評》
環境問題に関しては2014年はバイオマス燃料、2012年は森林減少をテーマに出題されており、資源の循環に関して出題されていることも多い。このような問題ではグラフをしっかりと読み込み、そこから特徴をつかみ取り思考する能力が求められる。
《分野》
気候、環境問題、食糧問題、東アジア地誌、南アジア地誌
《難易度》
やや易★★☆☆☆

《解答》
設問A
(1)ア…オーストラリア、イ…カナダ、ウ…マレーシア、エ…クウェート
(2)乾燥地域であるが、外来河川のナイル川の水を利用できるため。
(3)ナイル川の上流に位置し、山がちな地形や経済発展の遅れから水資源量が少なく、ダム建設などインフラ整備が進められている。
(4)食料自給率の低い国は食料輸入を通し穀物や家畜飼料の生産に用いた水を仮想水として海外から間接的に輸入しているという考え方。
設問B
(1)A…中国、B…インド
(2)工業化が進んだため工場の有害物質排出が多く、経済発展により車の使用が増え、排ガスも増加したが、環境対策が不十分なため。
(3)黄砂

第3問
《講評》
設問Aはヨーロッパ各国の年齢別の人口構成比から、その社会的背景を読み解く問題。設問Bでは、日本各地の産業構造や盛衰について出題された。おそらく、問われている解答はすべて高校で習った内容だろう。しかし、見慣れない図表を用いた問題から「自分の知っている」知識と結び付けて解答することは簡単にできることではない。本問は特にその傾向が強く、東大の過去問を研究し、思考力を身につけていた受験生と、そうでない受験生との間で大きな得点差が開いたであろう。本年度で最も差のついた大問だと思われる。
《分野》
人口、貿易、工業概論
《難易度》
やや難★★★★☆

《解答》
設問A
(1)ア…スウェーデン、イ…スペイン、ウ…ドイツ、エ…ブルガリア
(2)高齢化の進行により、社会保障費の増大が財政を圧迫し、労働人口の減少によって労働力不足や国内企業の生産額が伸び悩む問題。
(3)共産党政権の崩壊以後、政情不安と経済の低迷が続き出生率が低下し、かつ経済が発展し賃金が高い西欧へ労働力が流出するため。
(4)女性の社会進出が進む中で児童福祉施設や休暇制度が充実し、労働環境が改善されて子育てが容易となり、出生率が上がったから。
設問B
(1)A…東京、B…大阪、C…北海道、D…千葉
(2)輸送用機械は工場が創業地に集中しているが、電気機械工場は都市部の地価、人件費の高騰で地方の高速道路沿いに移転したから。
(3)金融恐慌以降、アジアでのデジタル家電の生産量増加で、本州ではデジタル家電等の生産が低迷したが、成長著しいアジア諸国に近く、国産輸送用機械を輸出する九州には堅調な需要があったため。