《総評》

本年度の東大化学は例年から大きく変化した。第二問は例年通り無機化学と理論化学の複合問題であったが、第一問では有機化学、第三問で理論化学が出題された。また、問題の量が例年に比べ大幅に減少し、解きやすくなっていた。特に、第一問は例年とは異なり、ⅠとⅡに分割されておらず、分量が例年の半分以下であった。このような変化に驚くことなく、落ち着いて問題を解くことが大切である。さらに、容易な問題が多かったので化学で点を稼ぐことが本年度の東大入試合格のカギの一つであった。

 

第1問
《出題分野》有機化学、構造決定
《難易度》…易しい
《講評》

今年は問題の構成が大きく変わり有機化学が第1問で出題された。また、いままで大問が前半後半と別れた2部構成だったのに対し、1部のみであり、実質的に問題量が半減している。さらに、内容も典型的な構造決定の問題で、絶対に落としてはならない大問であった。

《解答》

ア:a 塩化カルシウム  b ソーダ石灰

イ:分子量86より燃焼させたAは43.0mg÷86g/mol=0.5mmol

水分子として塩化カルシウム管に吸収された水素原子は27.0mg×2÷18g/mol=3.0mmol

二酸化炭素原子としてソーダ石灰管に吸収された炭素原子は88.0mg÷44g/mol=2.0mmol

よって、A1molあたり、水素原子6.0mol、炭素原子4.0molが含まれ、これらは分子量86のうち54を占める。よって、酸素が占める分子量は32。以上より分子式はC4H6O2

ウ:

SnapCrab_NoName_2017-2-26_20-23-12_No-00

エ:  ※幾何異性体を忘れないこと。

SnapCrab_NoName_2017-2-26_20-26-20_No-00オ:

SnapCrab_NoName_2017-2-26_20-27-25_No-00

カ:Cに含まれる窒素原子はすべてアクリルニトリル由来で、1分子のアクリルニトリルは1つのN原子を含む。アクリルニトリルの分子量が53、混合の物質量比が2:1ゆえ、

SnapCrab_NoName_2017-2-26_20-28-22_No-00

キ:三次元網目構造を取るため水分子が高分子化合物に入り込みやすいうえに、カルボキシ基と水分子が水素結合を形成するため。

 

第2問

《出題分野》金属の定性分析、溶解度積、窒素の化合物
《難易度》…やや難しい
《講評》

例年通り、無機化学と理論化学の複合問題であった。第一問や第三問に比べると解きづらい問題であった。Ⅰは金属の定性分析に関する問題であった。どの元素がどの実験で析出するかを考えて解き進めたい。オは考え方も計算もそれほど複雑ではないのでできれば正答したい。Ⅱはキにおいて、オストワルト法に出てくる反応式を思い浮かべられるかどうか、クにおいてキにでてきた反応式を使うことに気づくかがそれぞれカギとなった。コは一見難しそうに見えるが、考えればわかるはずなので正答したい問題であった。

《解答》

ア:(1)光を当てる。  (2)ギ酸

イ:操作x:Ba2+CO32→BaCO3

操作z:BaCO3+H2SO4→BaSO4+H2O+CO2

ウ:操作a:煮沸する。

操作b:希硝酸を加える。

操作c:アンモニア水を過剰に加える。

エ:炎色:赤

元素:Li

オ:CuSのみが沈殿する条件は、

     Ksp(CuS)<[Cu2][S2] かつ Ksp(ZnS)>[Zn2][S2]

  すなわち

     Ksp(CuS)/ [Cu2]< [S2]<Ksp(ZnS)/ [Zn2]

  これに与えられた値を代入すると

SnapCrab_NoName_2017-2-26_20-34-16_No-00

ここで、電離定数の定義より

K1[H2S]=[H][HS]

K2[HS]=[H] [S2]

  これら2式を辺々かけて整理すると

SnapCrab_NoName_2017-2-26_20-36-15_No-00  これを①に代入し、さらにK1K2、[H2S]の値を代入すると

SnapCrab_NoName_2017-2-26_20-38-20_No-00  ゆえに[H]の下限は、②の右側の不等式をみればよく、

 

SnapCrab_NoName_2017-2-26_20-39-16_No-00  以上より、求める答えは

SnapCrab_NoName_2017-2-26_21-5-24_No-00

 

カ:最大の酸化数をとる窒素酸化物:HNO3  +5

最小の酸化数をとる窒素酸化物:NH3 -3

キ:3NO2 + H2O → 2HNO3 + NO

※オストワルト法で出てくる反応である。

 

ク:NOが硝酸と反応するので、キの反応の逆反応が同時に起こる、すなわち平衡となる。したがって、平衡定数をKとして

SnapCrab_NoName_2017-2-26_20-41-25_No-00が成立し、この式からNOとNO2の濃度が決まるので、ともに硝酸濃度に依存する。

 

ケ:KNO3+H2SO4→HNO3+KHSO4

この反応は、濃硫酸の不揮発性を利用して、硝酸のみを気体として取り出し蒸留している。濃塩酸は揮発性の酸であるから、蒸留時に塩酸が気体となってしまうため、濃塩酸は適当でない。

 

コ:NO2分子は不対電子を持っており、2つのNO2分子が不対電子を出し合って共有結合することでN2O4が生じる。不対電子よりも共有電子対の方が安定であるから、NO2分子とN2O4分子では後者の方が安定で、よりエネルギーが低い。よって、N2O4が生じる反応は発熱反応である。

 

第3問

《出題分野》電気化学、化学平衡
《難易度》…やや易しい
《講評》

今年は問題の構成が大きく変わり理論化学が第3問で出題された。Ⅰ、Ⅱの2部構成であった。Ⅰは鉛蓄電池と水の電気分解、Ⅱはアンモニアの生成反応の化学平衡についての問題であった。Ⅱで圧平衡定数が出たほかは基本的な内容ばかりで、扱っている題材も見慣れた問題であったことから解きやすいと感じる受験生が多かったと思われる。

ア:正極:PbO2+4H+SO42+2e→PbSO4+2H2O

負極:Pb+SO42→PbSO4+2e

イ:正極:(3)

負極:(2)

ウ:(ⅰ)白金電極Bは水の電気分解における陽極なので、起こる反応は

4OH→O2+2H2O+4e

     であり、酸素が発生する。よって、白金電極Bで発生した気体は酸素。

(ⅱ)鉛蓄電池では、1molの電子が流れる間に1molの硫酸(分子量98.1)が消費され、1molの水(分子量18.0)が発生する。図3-2よ り、1000秒間の電気分解で電解液の重量が0.320g減少したことから、この間流れた電子は

SnapCrab_NoName_2017-2-26_20-48-6_No-00

である。(ⅰ)の反応式の係数比より、発生する酸素の物質量は流れた電子の物質量の4分の1であるので、白金電極Bで発生した酸素の物質量は

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  (ⅲ)捕集した気体における水蒸気の分圧は、27℃での水の飽和蒸気圧と考えられるので、4.3×103Paである。発生した酸素の分圧は1.013×105-4.3×103=9.70×104Pa。気体の状態方程式より、求める体積をV[L]とすると、

9.70×104×V=1.0×10-3×8.3×103×(27+273)

V=2.567…×10-2

   よって、捕集した気体の体積は、2.6×10-2L。

エ:a-2、b-1

オ:(3)

カ:0.40mol

キ:

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Q1Kpより、Qを小さくする方向、すなわち逆反応の方向に平衡が移動する。