第1問 同素体/原子の構造/化学結合/物質の状態変化/圧力/化学と人間生活
2017年化学基礎第1問は化学全体で出てくる基本用語の確認で構成されている。計算はないので時間はかからないだろう。同素体はかなりの確率で出題されるので押さえておきたい。問3で分子の構造についての知識が必要になって、焦った受験生もいるかもしれない。また、問6は見慣れない設定だが、あきらめず自分の持つ知識を活用すれば正答することができたのではないだろうか。それ以外の問題は去年とほぼ変わらない難易度であった。問7の化学と人間生活からの出題は、去年は出題されなかったが復活した。

第2問 物質量/濃度/アボガドロ定数/化学反応/中和滴定/酸化還元
第2問は、例年通り理論分野から幅広く出題され、多少計算を要する問題が多かった。基本的な知識があれば短時間で容易に解ける問題がある一方、問2ではアボガドロ定数を用いて、分子1つあたりの断面積を求める目新しい応用問題も出題された。また、問4は中和滴定の実験手順についての基礎知識が問われたが、ホールピペットの図やメスフラスコの標線など、教科書には書いてあるが、いままでのセンター試験では出てこなかった内容も含まれていた。難易度は昨年度並みであるが、基礎知識が完璧でないと高得点は取りづらかっただろう。

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①正 ダイヤモンドは炭素の同素体の一つであり、炭素原子のすべての価電子を共有結合に用いているので電気伝導性は小さい。 ②正 炭素の同素体である黒鉛は結晶中の共有結合に価電子を3個しか使っていないので残り1つの価電子が結晶中を動き回り、電気伝導性をもつ。 ③正 リンの同素体には黄リンと赤リンがあり、黄リンは白色で自然発火する有毒な物質であり、赤リンは赤褐色で自然発火はしないが発火点が低くマッチなどに使用されている無毒の物質である。 ④正 硫黄の同素体には単斜硫黄、斜方硫黄、ゴム状硫黄などがあり、ゴム状硫黄はその名の通りゴムに似た弾性をもつ。 ⑤誤 酸素は酸素分子O2とオゾンO3という同素体が存在する。化学基礎の学習範囲で同素体をもつ元素は炭素、酸素、硫黄、リンのみである。  問2  2  正解は② 解説 原子に含まれる中性子の数は原子の質量数から原子番号(陽子数)を引くことで求めることができる。求める中性子の数をnとする。 ① Arの原子番号は18なのでn=38-18=20個。 ② Arの原子番号は18なのでn=40-18=22個。

③ Caの原子番号は20なのでn=40-20=20個。 ④ Clの原子番号は17なのでn=37-17=20個。 ⑤ Kの原子番号は19なのでn=39-19=20個。 ⑥ Kの原子番号は19なのでn=40-19=21個。 以上より、中性子の数が一番多い原子は②である。  問3  3  正解は③ 解説 共有結合からなる分子では、水素原子は1本、酸素原子は2本、窒素原子は3本、炭素原子は4本結合することができると覚えておけばよい。 ①誤 3本ずつ結合できる窒素原子どうしなので、三重結合を形成する。   ②誤 2本ずつ結合できる酸素原子どうしなので、二重結合を形成する。   ③正 2本結合できる酸素原子が水素原子と1本ずつ結合する。図では見やすさのため水分子が直線形となっているが、実際には問4bの解説の通り折れ線形である。   ④誤 4本結合できる炭素原子が酸素原子と2本ずつ結合する。   ⑤誤 水素原子と炭素原子が単結合し、炭素原子どうしで三重結合を形成する。   ⑥誤 水素原子と炭素原子が単結合し、炭素原子どうしで二重結合を形成する。

問4 a  4  正解は① 解説 イオン結晶はイオン結合により形成される結晶のことを言う。金属イオンと非金属元素からなるイオンで構成される物質はイオン結晶であるので②、③、⑤、⑥は除外され、④は硫酸イオンとアンモニウムイオンから構成されるイオン結晶であるので、イオン結晶でないのは①の二酸化ケイ素である。二酸化ケイ素は共有結合のみから形成される共有結合性結晶である。  b  5  正解は③ 解説 ① メタンCH4は炭素原子を中心とした正四面体形の構造を持つ。 ② 水H2Oは酸素が非共有電子対を持つために電気的反発力からその構造は折れ線形になっている。 ③ 二酸化炭素CO2はO=C=Oという構造をしており、直線形である。 ④ アンモニアNH3は3個の共有結合対と1個の非共有電子対をもつので三角錐形をしている。正四面体形ではないので注意すること。  問5  6  正解は③ 解説 ①正 液体の状態では気体の状態より体積が小さいので分子間の平均距離も短い。 ②正 液体では、固体とは違い、分子の位置が固定されず熱運動によって各粒子は互いの位置を変換するような運動を繰り返している。 ③誤 沸点とは、液体の蒸気圧が大気圧と等しくなる温度なので、大気圧が変わると沸点も変化する。 ④正 固体から直接気体に状態変化することを昇華という。気体から直接固体に変化することも昇華という。 ⑤正 液体の表面では常に蒸発が起こっている。大気が飽和蒸気圧に達しているときでも、液体の表面では蒸発と凝縮が絶えず行われている。  問6  7  正解は⑥ 解説 この問題の実験の概要は、スポイト内の水を丸底フラスコに入れたことで、丸底フラスコ内のアンモニアが溶け、丸底フラスコ内の気圧が急激に下がり、丸底フラスコ内にビーカーの水が噴き上がるというものである。 ①正 アンモニアは水に溶けやすく空気より軽いので、上方置換によって捕集する。この選択肢は受験生に

アンモニアが水に溶けやすいという特徴を思い出させ、実験の仕組みに気付かせるヒントとなっていると思われる。 ②正 ゴム栓が緩んでいると丸底フラスコ内の気圧が下がっても、緩んだゴム栓と丸底フラスコの隙間からまわりの空気が流入し、水が噴き上がらないことがある。 ③正 丸底フラスコ内のアンモニアが少ないと、気圧の減少量が小さくなり、噴き上がる水も少なくなる。 ④正 アンモニアがすでに丸底フラスコの内側の水に溶けていて、気体のアンモニアが残っていないと、スポイトで水を入れても気圧は下がらず、水が噴き上がらない。 ⑤正 噴き出したビーカーの水に溶け残ったアンモニアが溶け、塩基性となる。BTB溶液は酸性のとき黄色、中性のとき緑色、塩基性のとき青色になる。この選択肢は受験生にアンモニアが水に溶けやすいという特徴を思い出させ、実験の仕組みに気付かせるヒントとなっていると思われる。 ⑥誤 メタンは水にほとんど溶けないので、丸底フラスコ内の気圧が下がらず、水は噴き上がらない。 問7  8  正解は③ 解説 ①正 リサイクルにかかるエネルギーは、鉱石から精製するエネルギーの3%で済む。 ②正 袋内に酸素が含まれていると、油が酸化されてしまう。酸化した油は体に有毒である。窒素は安定な化合物なので、油を酸化しづらい。④正 生分解性プラスチック以外のプラスチックは自然界で分解されづらい。⑤正 二酸化炭素は酸性の気体であり、雨は大気汚染の影響がなくても酸性(pH約5.6)である。⑥正 洗剤に含まれる界面活性剤には、水になじみやすい部分(親水基)と油になじみやすい部分(疎水基)がある。このため、水などの極性物質と油などの非極性物質を均一に混合させることができる。

物質量や濃度についての計算問題。質量パーセント濃度やモル濃度の定義を正確に理解できているかがカギとなった。 ①誤 標準状態(0℃,1.013×105Pa)において、気体1molの占める体積は、その種類によらず22.4Lである。よって、4Lの水素H2は、(4[L])/(22.4[L/mol])×2[g/mol]=8/22.4[g]であり、1LのヘリウムHeは(1[L])/(22.4[L/mol])×4[g/mol]=4/22.4[g]である。よって4Lの水素は1Lのヘリウムより重い。 ②正 1molのメタンCH4に含まれている水素原子は、分子式からわかるように4molである。また、メタンの分子量は16なので16gのメタンに含まれる水素原子は(16[g])/(16[g/mol])×4=4.0[mol]である。 ③正 質量パーセント濃度の定義は、(溶質の質量[g])/(溶液の質量[g])×100[%]=(溶質の質量[g])/(溶媒の質量[g]+溶質の質量[g])×100[%]である。したがって、この水溶液の質量パーセント濃度は、(25[g])/(100[g]+25[g])×100[%]=20[%]である。 ④正 モル濃度の定義は、(溶質の物質量[mol])/(溶液の体積[L])×100[%]であり、水酸化ナトリウムの式量は23+1+16=40[g/mol]なので、この水溶液のモル濃度は、(0.1[mol])/(0.1[L])=1.0[mol/L]である。  問2  2  正解は② 解説 アボガドロ定数に関する計算問題。アボガドロ定数とは、1molあたりの粒子(分子)の数のことである。w[g]のAの物質量は、w/M[mol]であり、w[g]のAに含まれる分子の個数はw/M[mol]×NA[個/mol]=(wN_A)/M[個]である。よって、求める分子1個あたりの断面積は、s[cm2]=X[cm2]÷(wN_A)/M=XM/(wN_A )[cm2]である。 これを1つの式にまとめると以下のようになる。 s[cm2]×(w[g])/(M[g/mol])×NA[/mol]=X[cm2]  ∴s=XM/(wN_A )[cm2]

エタノールを完全燃焼させたときの反応式は、C2H5OH+3O2→2CO2+3H2Oである。よって、1molのエタノールを完全燃焼させると、2molの二酸化炭素が発生する。エタノールの分子量は12×2+1×6+16=46なので、44gの二酸化炭素が発生したとき、燃焼したエタノールの質量は、(44[g])/(44[g/mol])×1/2×46[g]=23[g]である。 また、わざわざ反応式を書かなくても、1molのエタノールに含まれる炭素原子は2molなので、二酸化炭素が1mol発生するとき、燃焼したエタノールは0.5molだと分かる。  問4  a   4  正解は④ 解説 中和滴定に用いられる器具についての問題。それぞれ、①は駒込ピペット、②はビュレット、③はメスシリンダー、④はホールピペット、⑤はメスフラスコである。   b   5  正解は④ 解説 ホールピペットとメスフラスコの使用方法についての問題。 操作Ⅰ:ホールピペットを、純水で洗うとメスフラスコで調製した標準溶液の濃度が薄まってしまう。このまま、メスフラスコに溶液を入れるとはかりとる酸・塩基の物質量が変化し、正しい濃度が得られなくなる。したがって、ホールピペットは、はかりとる水溶液ですすぐ(共洗いする)。 操作Ⅱ:メスフラスコは、純水を加えて溶液の濃度を正確に薄めたり、標準溶液をつくるのに用いられるが、液面は表面張力のため、下図のように端が中央に比べて高くなり平らではない。このとき、メスシリンダーの目盛りを正確に読み取る際と同じように、液面の底面がフラスコの標線に一致するまで純水を加える。

滴定曲線の問題のポイントは酸塩基の価数と強さである。価数は中和に要する液量に影響し、強さは中和点のpHに影響する。たとえば、2価の酸を中和するためには、同濃度の1価の酸の2倍だけ水素イオンを生じるので、塩基の量も2倍必要となる。強酸と強塩基の中和滴定の場合は中和点のpHは7付近であるが、弱酸と強塩基の場合は塩基性側に偏る。弱塩基と強酸の場合は反対に、中和点のpHは酸性側に偏る。 本問の化合物群を見てみると、NH3:1価の弱塩基、KOH:1価の強塩基、Ca(OH)2:2価の強塩基、CH3COOH:1価の弱酸、HNO3:1価の強酸である。 Aは、フェノールフタレインを用いたときの色の変化が「赤から無色に、徐々に変化した」という点に着目する。フェノールフタレインの変色域は塩基性側にあるため、中和点が酸性側に偏っていて塩基性領域でのpH変化が小さいために色が徐々に変化したのだと考えられる。中和点が酸性側に偏っているのは、前述のように弱塩基と強酸の中和滴定の場合である。よって、Aに入っていた化合物は化合物群のうち弱塩基であるNH3となる。 Bは、表1で、中和に要した液量がBのみ20mLであり、2倍量必要となっているので、Bは2価の酸塩基であると考えられる。よって、Bに入っていた化合物は化合物群のうち2価であるCa(OH)2となる。 Cは、メチルオレンジを用いたときの色の変化が「赤から黄に、徐々に変化した」のがポイントである。メチルオレンジの変色域は酸性側にあるため、中和点が塩基性側に偏っていて酸性領域でのpH変化が小さいために色が徐々に変化したのだと考えられる。中和点が塩基性側に偏っているのは、弱酸と強塩基の中和滴定の場合である。よって、Cに入っていた化合物は化合物群のうち弱酸であるCH3COOHとなる。  問6   15  正解は⑥ 解説 酸化還元反応の係数決定の問題であるが、酸化還元に関する知識は必要なく、反応式の両辺の原子数と電荷をそろえればよい。1つ目の反応式 MnO4-+aH2O+be-→MnO2+2aOH- について、両辺で酸素原子の数は等しいので、 4+a=2+2 a a=2 さらに、両辺で電荷も等しいので、 (-1)+b×(-1)=2a×(-1) b=2 a-1=2×2-1=3 また、3つ目の反応式 MnO4-+cM2++aH2O→MnO2+cM3++2aOH- についても、両辺で電荷が等しいので、 (-1)+c×(+2)=c×(+3)+2a×(-1) c=2 a-1=2×2-1=3 よって、b=3、c=3である。

物質量は二酸化炭素と炭酸カルシウムのどちらの情報からでも求められるが、炭酸カルシウムの質量から求める場合には単位換算する必要があるため、やや面倒である。 塩酸の体積はわかっているので、反応した塩酸の物質量を求めればよい。化学反応中の物質量比が、その反応式の係数比と等しいことを使う。 CaCO3+2HCl→CaCO3+H2O+CO2 の係数比より、反応した塩酸の物質量は、発生した二酸化炭素の物質量の2倍であり、反応した炭酸カルシウムの2倍でもある。図2より、すべての塩酸が反応したときに発生した二酸化炭素の物質量は、0.025molである。よって、反応した塩酸は、 0.025×2=0.050mol である。反応に用いた塩酸の濃度は、 0.050/(25/1000)=2.0mol/L となる。 また、反応した塩酸の物質量は、反応した炭酸カルシウムの質量から求めることもできる。すべての塩酸が反応したときに反応した炭酸カルシウムの質量は、図2より2.5gである。炭酸カルシウムの式量は100なので、2.5gの炭酸カルシウムの物質量は、 2.5/100=0.025mol である。よって、反応した塩酸の物質量は、 0.025×2=0.050mol と求めることもできる。