東大医学部に入る方法は理三だけではない?

医学部は大学入試の中でも難関としばしば位置づけられますが、その中でも東大医学部は最難関と言われています。ご存知の方も多いかと思いますが、東大医学部を目指す受験生は「理三(理科三類)という科類(科類の説明については後述します)を選択して東大を受験します。そのため、多くの方は「東大医学部=理三」というイメージを持っているでしょう。

 

そんな日本最難関の東大医学部に入りたい!と思っても、理三の合格最低点は東大入試の難易度などお構いなしに恐ろしいほど高く[i]、その壁の前に理三なんて常人が入れるものではない…ともはや逆の意味で眼中にない受験生も多いかもしれません。

 

それでは理三に入れなかったら東大医学部を諦めるしかないのでしょうか?そんなあなたに朗報(?)です。この世には理三に合格しなくても東大医学部に入るチャンスが確かにあるのです。ここでは実際に理三に合格せずに理一から東大医学部に進学することができた筆者が、その裏技的方法を紹介したいと思います

 

理三を受験せずに東大医学部に入る方法

理三を受験することなく東大医学部に入る方法は主に以下の3つがあります。

 

①東大医学部に学士入学する

②進振りで東大の他科類から医学部進学を目指す

③東大の別の学部に進学後に転学部する

 

それぞれを具体的にみていきましょう。

 

①東大医学部に学士入学する

残念ながら東大では他大学に在籍する学生の編入学を実施していません(一部例外として工学部などで高専卒業者を対象に認めているところはあります)。

一方、社会人などで4年制以上の大学学部を卒業した方については、選考をしたうえで東大の後期課程(学部)への入学を認める「学士入学」を実施しています。これなら理三を受験しなくても東大医学部入ることができる可能性があります。

しかし一つ重大な注意点として、医学部については他大学を卒業した者に対する学士入学を認めていません。つまり、東大医学部に学士入学するには東大の何かしらの学部を卒業していることが大きな前提条件となります。なので、この方法で東大医学部を目指す人はまずはどの学部でもいいので東大を卒業できるようにしましょう。

 

②進振りで東大の他科類から医学部進学を目指す

この方法について説明する前に、まず東大特有の進学システムである「進振り(進学振り分け)について説明します。

 

一般的にある大学を受験する際は(経済学部、理工学部などのような)志望学部ごとにその学部の入試を受験します。しかし東大では文科一・二・三類、理科一・二・三類と呼ばれる「科類」から選択して受験します。東大入学後は科類を問わず全員が教養学部として2年間の前期課程を過ごし、その後に行きたい学部に進学するのですが、そこで通らなければならないのが「進振り」という東大生一大イベントなのです。

 

進振りとは2年生の夏までに受けた各授業の点数の平均点を使って行きたい学部・学科を志望し、志望人数が学部・学科の定員を超えていた場合にその平均点が高い順に内定していく、いわば東大生によるハイレベル進学バトルなのです。とはいえ、各学部は特定科類とある程度結び付きが強く、多くの学生は以下のような進学傾向にあります。

それでも条件を満たせば行きたいところに行くことは確かにできます。ただし学部・学科によっては他科類に課す条件が厳しく(学部が指定した科目(=要求科目)を必修科目以外に何個も履修しなければならないなど)、実質的に進学が難しいこともあります(それでも突破する人が毎年一定数いるので東大生は恐ろしいです…)。

 

では医学部への進振りの定員がどのようになっているか見てみましょう[ii]

上の表を見ていただくとわかると思いますが、東大医学部は理三以外の科類からの進学も認めているのです。それも全科類枠を使えば、文系でも東大医学部に進学することができるのです(実際に同期を含めほぼ毎年文系から1人は医学部進学を果たしています)。

 

ここで各進振り枠の進学最低点の推移を見てみましょう。

このように見ていただくと分かると思いますが、理二枠・全科類枠に通るには毎年決まって90点程度とかなり高い平均点を必要とします。これはつまり単純に考えても2年生の夏までに受けるすべての科目の試験でコンスタントに9割程度を取り続けなければならないということです。なお理二枠と全科類枠を比較した際には理二枠の方が通りやすいとされています(実際に理二枠の進振り最低点が全科類枠を上回ったことはありません)。

これは理二枠の方が人数が多くかつ枠の科類が一つに絞られているからです。また全科類枠(文系・理一)については「生命科学I/II」のいずれかの履修が別に要求されます。これらの観点から考えれば、理三以外の科類で入学し進振りで医学部を目指す場合は理二に入学するのが得策といえるでしょう。

 

また、これは医学部進学に限らず進振り全般で言えることですが、行きたい学部の競争が激しいときには高い平均点が必要となるため、点数が取りやすい授業を選んでとる傾向があります(これがいいことなのか悪いことなのか…)。私自身も実際に東大内で流通している情報などを参考にしながら授業を選択しました。東大の中で狭き門をくぐりぬけるには自分で常に考えながら要領よく行動する必要があるのです。

 

余談ですが、理三以外の科類から医学部に進学した学生の事を「医進」と呼びます。医進の人たちは試験で好成績を取り続けてきた人ばかりなため、理三から「真面目」「勉強ができる」「意識が高い」などのイメージを持たれることが多いです。理二枠で通った人たちが理二の中でも一目おかれる存在となることはさることながら、全科類枠で通った人たちはすべての科類からたった3人しか通ることができない、東大の中でもさらに狭き門を通った猛者としてある種のリスペクトを払われますが、残念ながら世間的な認知度は全くありません。

 

③東大の別の学部に進学後に転学部する

これは「転学部」という制度を利用して医学部進学を目指す方法です。

先ほど述べましたように、2年の夏に行われる進振りで進学学部が決定したのち、2年の秋から進学先の専門科目の授業が始まります。しかし、進学した後でこの学部は自分に合っていないな、やっぱり別の学部の方に行きたい、と考える学生は当然います。

そこで彼らが利用できるのが転学部制度です。簡単にいうと転学部したい学生たちは3年の夏のときに一学年下とともに再度進振りに参加し、その後降年してまた2年生の秋から別の学部に進学しなおします。

進振りは前回進振り時の点数を使用しますが、手続きはやや煩雑で、志望理由書の提出や面接、教授会の審査を通る必要があります。

点数を用いるという点では本質的なところでは進振りとあまり変わらず、結局は1~2年時の試験で高い点数を取っておく必要があります

 

進振りの実際

先ほど申し上げましたように、筆者自身の入学科類は理一であり、その後進振りで医学部に進学しました。

実際入学してからすぐに医学部進学を目指していたわけではありませんでした。医学に興味を持っていたものの理三に合格できるほどの成績ではなく、また入学後に理一から医学部に進振りで進むことの厳しさを知り、医学部に行くことはなかば諦めていました(こういった東大に入ってからの科類選択の影響を入学前に知ることはあまりないので、もし東大を目指す方がいらっしゃればこの記事が少しでも科類選択の一助になればと思います)。

大学の試験というものがどの程度勉強し、どの程度解けていれば合格できるのかという感覚が分からなかったため、恐怖心から毎日勉強は欠かさずやっていました。勉強量については高3の受験期の7割程度だったと思います。当然その中でサークルやバイトもやっていたので、東大の初めの2年間は想像していたより忙しかったですが、とても充実していました。

 

最終的には継続的に勉強していた甲斐もあってか、思っていたより高い平均点をとることができ、医学部に進学することができました。その時の点数がこちらです。

先ほど全科類枠で通るのはとても厳しいようなお話しをしましたが、はっきりいって何か特別なことをやらなければいけないことはなく、自分でしっかりとるべき科目を見極め、コンスタントに勉強を続けるのみです。

大学に入れば長い受験勉強から解放されて勉強のモチベを保つことが難しいところもありますし、バイトやサークルなどを始める方も多いでしょうから、勉強に使うための時間が十分にある環境ではないかもしれません。問題はその中でどれだけ勉強を続けて周りと差をつけることではないでしょうか(といっても東大生の中には勉強時間が少なくてもいい成績をとってしまう人も多いですが…)。

 

おわりに

以上長々と理三以外で東大医学部に入る方法を説明してきましたが、勘のいい方は一つの不都合な真実に気づいてしまったかもしれません。それは、東大医学部に入るには結局どこかのタイミングで東大に入学せざるをえないということです。さすがに日本最難関の東大医学部なので、そう簡単に入らせてはくれないということでしょう。東大に合格したというある程度の保証を求めているのかもしれません。

 

それでも、東大医学部に入るためのハードルを少しでも下げることはできるでしょう。理三に合格すること自体はかなりの努力を要しますが、その一方で理二などの他科類に合格することの方がまだ可能性が高いかもしれません。

先ほどご紹介した方法の中でもやはり一番現実的な方法は理二からの進振りと私は考えています。ただ、確かに自分で点数の取りやすい科目を狙って高得点を目指す方法はある程度の自由度があり自分でコントロールできるという考え方もできますが、その一方で先ほど述べたように大学での勉強のモチベーションを保つことや大学の勉強に慣れないなどの難しさは確実に存在します。そして理二からの進振りを目指したものの失敗し、やむなく仮面浪人して理三を再受験する人を何人も見てきました。

 

本記事の趣旨からすると元も子もない話になってしまうかもしれませんが、自分の能力や時間的余裕を考慮し、自分の中で一番優先したいことは何か、東大に入ることが目的なのか医学部に入ることが目的なのかをしっかりと熟考したうえで、少しでも悔いの残らない進路選択をしてほしいと思います。

 

[i] 理系に限った場合、科類を問わず問題は共通ですが、理三は理一や理二に比べ平年合格最低点は50点以上高いです。詳しくは東大のHPをご覧ください。

[ii] 第1段階と第2段階を合算しています。