医学部で留年

医学部の留年が増えてきていると言われています。せっかく大変な思いをして医学部に受かったのに、進級できないとなると、気分がなえてしまいます。

医学部はどうして留年が多いのか? 留年しやすい学生の特徴は? 留年しないためにどのようなことに気を付ければいいのか? など、どうしても留年したくない医学生のために、ぜひ知っていただきたい情報について、まとめています。

医学部の留年は増えている?

近年の医学部ブームにより、医学部の偏差値はかつてないほど高くなりました。しかしそれにもかかわらず、近年、医学生の留年率が高くなっていることが問題化しています。どうしてなのでしょうか。

1つ考えられるのは、医学部の定員が増えたことです。平成20年度に医学部の定員が増やされて以来、医学部の1、2年次の休学率が増えています。間口が増えて、医学生となる人は増えたものの、医学部という特殊な環境になじめず、ドロップアウトしてしまう学生は少なくありません。こうした学生はもちろん、進級もおぼつかないでしょう。

彼らが医学部になじめない理由には、1年次のカリキュラムの大変さがあり、進級のハードルの高さがあります。

注意すべきは1年次

医学部の学力に関するアンケート調査結果」によると、1年次の留年が増加傾向にあることが分かります。こちらは毎年の募集定員の増加も計算に入れた補正留年率の数値になります。

年次 平成26年度 平成27年度 平成28年度
1年次 173.6% 163.6% 181.8%
2年次 125.2% 127.9% 136.5%
3年次 106.5% 103.0% 113.8%
4年次 117.5% 135.6% 119.2%

(医学生の学力に関するアンケート調査結果、一般社団法人全国医学部長病院長会議)

1年次の留年が増えている理由には、基礎医学があります。医学部では、医学部に入学するとまず教養科目を学び、それが終わると基礎医学と臨床医学の勉強をします。早い大学では、1年後期から、基礎医学の学習が始まります。

基礎医学は、覚えることの多い学問です。基礎医学の学習が始まったら、生徒は暗記・暗記に追われる毎日になります。初めての大学生活で慣れない中、多くの内容を効率的に覚えなければなりません。そこが、医学生にとって負担になるのです。基礎医学については後述します。

物理で受けた生徒は注意

医学部を受験する際、物理学を選択した学生は、入学後の学習でつまずきやすくなります。中には物理が必須の大学もあるので、受験生のときには深く考えず、自分の得意不得意で物理を選択してしまった人もいるでしょう。

しかし、医学部の授業は、ほとんどの内容が生物学に関する内容であり、入学直後から難しい学習が始まってしまいます。生物をしっかり理解して入学した生徒でも、授業を理解するのが難しい場合もあるくらいです。物理を選択した人は、医学部に受かったらすぐに生物の自主学習を初め、入学式前には、教科書レベルの知識はしっかり把握しておくようにしましょう。

単位1つで決まってしまう厳しさ

医学部の留年が出やすくなっている大きな理由は、1つでも単位を落としてしまうと留年に大きく近づくという高いハードルです。他の学部なら、決められた数の単位さえ取れれば進級できますが、医学部は1つでも取りこぼすと少し厳しくなります。科目はたくさんあり、それら1科目も失敗することは許されません。1単位を落として留年すると、来年度はその1科目の授業を受けるためだけに通学する羽目になります。非常に厳しい世界です。

教養科目が終わってからの科目はすべて必修となります。

学生が医学部に入る目的が変化

医学部の定員が増えたことは先に述べた通りですが、定員増で医学生の数が多くなった結果、従来とは違った目的で医学部に入る学生が出現するようになったことも、留年率を上げていると言われています。

医師国家試験の合格率を上げたい大学側の思惑

私立大学の医学部は、国立大学の医学部に比べると、学費が非常に高いです。大学は、「それだけ高い学費を払ってでも通いたい」と受験生・保護者に思ってもらわなければいけません。そのために、国家試験合格率を上げて、アピールポイントとしようとしています。

合格率を上げるためには、試験に受かりそうもない学生に進級してもらうわけにはいきません。進級の基準を厳しくして、試験に合格する可能性の高い学生だけを上にあげるようになります。

こうして増やした国家試験合格者の数を見て、受験生・保護者はその大学を素晴らしい大学だと思うでしょう。しかしその裏で、何人もの留年者が泣いている事実を忘れてはいけません。

留年しやすい基礎医学

基礎医学は暗記項目が膨大にあるため、この暗記の嵐に耐えられないと、留年リスクが高まります。解剖学では、暗記に加えて実習をこなすための体力も求められます。しかも複数の基礎医学科目を学ぶため、分野の違う内容を並行して暗記しなければいけません。

基礎医学は1年次~2年次で学びます。努力のかいがあって、1年次で進級できたとしても、基礎医学は2年次も続きますから気を抜けません。留年リスクとなりがちな難易度の高い基礎医学について紹介していきます。

肉眼解剖学

解剖学は講義に加えて実習もあるので、ハードルが高いと言われています。

講義と実習により、人体構造のあらゆる名称を暗記しなければいけません。日本語のほかに英語やラテン語表記を暗記させる大学もあります。部位の名称以外にも、筋肉の起始や停止なども覚えさせられます。

解剖実習は、力仕事もあり、長時間かけて行うので体力勝負です。肉眼解剖学を学んでいる間は、やらなくてはいけないことに追われる毎日となります。

生理学

生理学は解剖学と並び、留年リスクの高い学問です。生体の複雑な生命現象を、物理化学的手法により解明していきます。細胞生理、消化器生理、神経生理、腎生理、呼吸生理、内分泌生理、循環生理、血液生理などの生理機能、生体の機能を理解していきます。範囲がとても広いので、覚えきれずに留年する学生が続出します。

ただし、医学と深く関わりのある学問なので、医学に興味がある学生なら、生理学の授業を楽しめるでしょう。そうでない学生にとっては地獄です。ちなみに医学部門のノーベル賞の正式名称は「ノーベル医学・生理学賞」。生理学というのは、医学にとってとても大切なものなのです。

生化学

医学に関係する生命現象を化学レベルで読み解いていきます。

酵素や代謝などを学んでいきます。生化学は医学の基本となるため、研究者を志すなら正しい理解は必須です。疾患の病因や病態の解明や合理的な治療の開発のために、生化学の知識は欠かせません。実習ではピペットワークなどに必要な実験手技も学びます。

解剖学や生理学と違い、生化学は化学レベルで考えるので、内容をイメージしづらいです。医学というより高校化学の延長のような感じです。実際、最初は高校化学の高分子有機化合物の話から始まります。

解剖学や生理学と同じく、暗記すべきことがとにかく多いので、留年リスクは高いです。

留年しやすい学生の特徴

せっかく医学部に入ったのに、いつまで経っても進級できず、大学を卒業できない。ついには退学せざるを得なくなってしまう……なんてことになっては困ります。なんとしてでも留年せずに、ストレートで医師国家試験まで進みたいものです。

そこで、留年しやすい学生の特徴についてひも解いてみたいと思います。留年しやすい学生とは、どのような傾向を持つ学生なのでしょうか。1つには安定志向であること、もう1つは私立大学の医学生であることが挙げられます。

留年しないためにすべきこと

医学部は勉強が大変であること、そしていかに進級しがたいのかがおわかりいただけたと思います。しかしせっかく入学したのだから、できることなら留年せずに、ストレートで卒業したいものです。そこで、医学部で留年しないためにどのようなことに気を付ければいいのかについて、考えていきましょう。

情報共有する

医学部の定期試験で良い成績を上げるには、情報がものを言います。試験に出やすい情報を、効率よくピックアップして覚えていく要領の良さが求められます。

真面目にコツコツ勉強しているだけでは、必ずしも良い結果が得られるとは限りません。すべての授業にきちんと出席していたとしても、あらゆることについてくまなく網羅して試験に臨むのは至難の業。どうしても勉強は偏ってしまいます。運悪く、試験に出ないところばかり勉強してしまった結果、単位を落としてしまうこともあるでしょう。

友人と出やすいところについて分担で検討し、逐次情報交換していけば、試験の負担を軽くでき、単位を取得しやすくなります。特に解剖学や生化学などは、覚える内容が多いですが、友人との情報交換を上手く使うことで、有効な試験対策ができるでしょう。

国公立大学を選ぶ

国公立大学に入っておけば、それだけで進級しやすくなります。国公立大学は私立大学のように進級のハードルを上げるようなことはしていないからです。入学できるだけの学力があり、留年は極力避けたいというのなら、国公立大学の受験をおすすめします。

自分を見つめなおしてみる

敵は自分自身にありと言いますが、自分の心が進級の足かせとなっている可能性があります。医学部で6年間学ぶには、医療を学んで社会貢献したいとか、常に医療について学び続けたいというような、高いモチベーションが欠かせません。これがないと、暗記・暗記・暗記そして実習・実習・実習と続く過酷な毎日を乗り越えることができません。

大学進学の際は、大学で何を学び、将来どのような仕事をしたいのか、またどんなことをして社会に貢献したいのかを自分に問いかけてみてください。そして、それを実現できる分野を選択することです。それは必ずしも医学部でないとわかった方。ほかの学部も検討してみましょう。自分はどうしても医学部に行き、医学を追求したいのだとわかった方。全身全霊でぶつかりましょう。

まとめ

近年の医学部の留年数の増加は深刻な問題です。進級を抑えて医師国家試験の合格率を何とか上げようとする私立大学の姿勢も問題がありますが、安易な理由で医学部を受験してしまうことによる弊害もまた、ここに現れています。