医学部卒業後の進路

医学部卒業後は、いずれかの進路を決めることになりますが、自分に合った進路を選びたいですよね。
医学部卒業後の進路として考えられる選択肢について、まとめています。また、医学部を卒業したらすぐに進路となるわけではなく、その前の段階でいくつかやるべきことがあります。どのような順序で最終的な進路へと向かっていくのか、見てみましょう。

医師国家試験に合格したら

医学部を卒業し、医師国家試験に合格したとしても、すぐに就職するわけではないということです。ここが、4年制で卒業したらすぐ会社に就職して働き始めるほかの学部生と違うところです。

また研修を始める前に、医籍への登録も必要です。医籍とは、医師の戸籍登録のようなもので、すべての医師はこの医籍に登録されています。

初期臨床研修

医学部を卒業してまず始める研修が、初期臨床研修です。内科・救急・地域医療の必修科目、外科、小児科、産婦人科、精神科、麻酔科の選択必修科目を2年間かけてローテートします。幅広い科目について、知識と技能を身に着けることが目的です。

医学生の間では、この初期臨床研修をする施設に採用されるための活動を「就活」と言っています。しかし2年経つとほかの施設に行く可能性は十分あるわけですから、他学部で言う就活とは意味合いが異なります。

研修が終了すると、初期研修を修了したことを医籍に再登録します。

後期臨床研修

後期臨床研修に入ると、自分が希望する科目で働けるようになります。2年間の初期臨床研修を受けることで、一人前の医者と呼んでさしつかえない技能を必要最低限は身に着けられるのですが、3年目以降の後期臨床研修も、まだ「研修医」という位置づけになります。後期臨床研修は、少なくとも3年以上行います。

後期臨床研修の大きな目的は、「専門医」として認定されることです。この専門医を持っているかいないかで、医師としての信頼性が大きく変わってきますから、非常に重要な期間と言えます。

後期臨床研修が終わると、いよいよ、一般的に言われている意味合いでの「就活」が始まります

後期臨床研修を受けた医療機関に残ってスタッフとして採用されることもあるし、大学医局の関連機関に勤務する場合もあります。

大学院進学

医学部卒業後は初期臨床研修を受け、後期臨床研修を受け、専門医資格を取得するという流れが一般的ですが、大学院に進学するという選択肢もあります。ただ、大学院に行くタイミングは、初期臨床研修を終えたあとの場合もあるし、後期臨床研修を受けたあとの場合もあるし、もっとあとになって行く場合もあります。

通常の大学なら、学士課程が4年あり、大学院に進むなら修士課程2年間、そして博士課程4年間という順番ですが、6年制の医学部は、卒業後に直接博士課程に進学できます。医師が「院に行く」と言えば、それは博士課程への進学です。

学部卒業後、初期臨床研修を受けずに大学院に進学して医学博士となり、それから臨床現場に移るという道筋を進むこともできます。

医学部卒業後の進路

医学部卒業後、ほとんどの人は医療業界へと進むことになりますが、例外もあります。医療業界というのもいろいろな選択肢があるし、医療従事者とはまったく関係のない仕事に就くこともできます。一口に医師と言っても、実に多彩な進路が可能なのです。

医師の進路にはどのようなものがあるのか、見ていきましょう。

臨床医

医学部卒業後の進路として一番多いのが、臨床医です。大きく分けて、勤務医と開業医があります。

勤務医とは病院や診療所などに雇われて働いている医師を言います。
勤務医の場合、働き方は大きく2つに分けられます。

  • 常勤医師
  • 非常勤医師

常勤医師は1つの医療機関で週のほとんどの時間を勤務する働き方の事で、大まかにいうと会社に勤める正社員の様に働いています。
一方で、非常勤医師は1つの医療機関で勤務する時間が短く、平たく言うと出稼ぎの様なものです。

ある病院で常勤で働いている医師が、収入を増やしたかったり、勤務先から指示を受けたりして、別の病院に非常勤で働くことも多々あり、これは「外勤」と呼ばれています。
また、1つの医療機関に常勤で働くことはせずに複数の医療機関で非常勤で働くフリーランス医師という働き方もあります。
勤務医と一言で言っても様々な働き方があります。

開業医の場合、その規模はさまざまです。地域の町医者のようなクリニックもあれば、大きな医療法人の経営者となることもあります。透析クリニックや不妊治療クリニックを経営する開業医の年収は高い傾向にあります。

研究医

研究医の研究する対象は、基礎医学と臨床医学の2種類があります。

基礎医学……人体や生命活動を解明する
臨床医学……病気の原因や治療方法を研究する

研究医になるのなら、医師免許を取得したあと博士課程で学ぶことは必須です。先述のようにどこかのタイミングで研修を受けることもできます。

基礎研究の研究者を志す人でも、2年間の初期臨床研修を受ける人が増えています。これは、臨床研修を受けなければ、「保険医」の資格が得られないためです。保険医とは、各種公的医療保険に加入する患者を診療する資格のある医師のことです。

院を出たあと、大学の研究室に入り、研究をすることになります。

企業所属医師

企業に所属し、勤務するのが企業所属医師です。企業の産業医や、製薬企業所属医師になる道があります。企業の産業医なら、社員の健康管理を行います。製薬企業の企業所属医師は、臨床開発や有害事象の調査を行ったりします。

医師はハードワークで知られますが、企業所属医師を選択すれば、一般的な会社員と同じような働き方ができます。カレンダー通りの休日があり、拘束時間も9時から6時の定時で帰る、といった働き方が可能です。ワークライフバランスを取りやすい進路と言えるでしょう。

公務員

厚生労働省の「医系技官」という国家公務員として働くことができます。医系技官は、医療制度や公衆衛生分野を中心に、専門性を生かして働きます。感染症など新しい疾患が国内で発生したときには、対策立案を主導し、原因究明に努めます。

自衛隊の病院や医務室などで医療活動を行う「防衛医官」というのもあります。防衛省所属の国家公務員です。

地域住民の保険、医療、衛生、福祉に関わる「公衆衛生医師」、不自然死の死因を明らかにする「監察医」という進路もあります。これらは地方公務員です。

ビジネスパーソン

医師として働く以外に、医師免許を生かしてビジネスの世界で活躍することができます。医療系ベンチャーを起業したり、医療経営を学んで医療経営コンサルタントになったりするといった働き方です。仕事の上で医師として患者を診察したり、何かを研究したりすることはなく、医療知識を持つビジネスパーソンとして働くことになります。

医療ベンチャーやコンサルを自ら立ち上げるというのは、抵抗があるかもしれません。そんなときは医療ベンチャーを興したいと考える、事業センスのある人物と組むという方法もあります。経営ノウハウに長け、良いアイデアがあるのだけれど医療の専門知識がないという起業家にとって、医師免許取得者は喉から手が出るほど欲しい人材です。

国際医療協力

海外の医療環境が整っていない地域に行き、医療に従事するのが国際医療協力です。代表的なのは、国境なき医師団の活動です。個人で医療環境が整わない地域に出かけて医療支援をする国際医療協力者もいます。渡航先としては、ミャンマー、カンボジアなどのアジア地域、スーダンやウガンダなどのアフリカ地域が考えられます。

具体的な活動は、無医村の地域での巡回診療や保健衛生指導などです。医療環境の整わない国では、特に農村部で自分の住む町に病院がないことが多く、病院まで行くための交通費が日当の何倍もかかったりするので、住民は必要な医療を受けがたい状況にあります。そのような人々のために、車で巡回して医療を提供します。

保健衛生指導は、手洗いや歯磨き指導、トイレ設置の重要性など、感染症対策のための必要な知識を地域の住民に伝えていきます。

その他

医師という肩書を持っていれば、まったく違う分野での働き方も可能になります。例えば、小説家になったり、翻訳者になったり、タレントになったりするといった働き方です。

小説家では久坂部羊が有名です。自らの持つ医療知識を駆使することで、ほかの作家にはない作品世界を築くことができます。

翻訳者は「IT」「マーケティング」など、それぞれ専門分野を持っています。このうち「医学」を医師免許取得者が専門とすれば、これ以上強いものはありません。専門分野を持つとはいっても、たいていの翻訳者はその分野の深い知識は持っていないので、難解な専門書を訳させるとチンプンカンプンの翻訳をしてしまうことがあります。しかし医師免許取得者が医学を専門とすれば、こうしたミスはあり得ませんので、引っ張りだこの翻訳者になれるでしょう。

タレントというのは「医者タレント」のことで、医師という肩書を生かしてテレビ出演します。医学に関する話をすることもあるし、まったく関係ない話をすることもあります。どちらかというと後者のほうが多いかもしれません。

あなたはどの進路に向いている?

医学部に入って、卒業してどこかの病院に就職して医師になって……というオーソドックスな進路のほかに、さまざまな仕事の可能性があることがわかりました。

これらの中から、あなたに合う仕事を見つけてみましょう。とはいえ、選択肢が多いと迷ってしまうものです。タイプ別に考えてみると、答えが見つかりやすいかもしれません。

どの仕事が自分に向いているか?

いろいろな進路を見てきましたが、自分がどんなタイプに当てはまるのかを考えることによって、進むべき道が見えてきます。あくまで一案ですが、タイプ別におすすめの進路をご紹介します。

タイプ おすすめ進路
患者との時間を大切にしたい 臨床医
医学を変化させたい 研究医
ワークライフバランスを大切にしたい 企業所属の医師
身分を安定させたいor国家に関わる仕事をしたい 公務員
社会で自分の力を試してみたい ビジネスパーソン
世界の健康のために尽くしたい 国際医療協力
人と違う道を歩んでみたい その他

どの進路も魅力的です。あなたのやりたいこととフィットすれば、充実した働き方ができるでしょう。

将来について考えてみよう

医学部を受験する時点で、なんとなく医師になったあとの自分のイメージはできているかもしれません。しかしそのあと、6年間学ぶ中で、新しい考えが生まれてくる可能性があります。実習で医療現場に赴いてみて、将来自分のやりたいことが見えてくるということもあるでしょう。

最初からこれと決めず、いろいろな可能性を検討しながら6年間を過ごしてみるといいかもしれません。

まとめ

医学部の学士は6年間あって、初期臨床研修の2年間、後期臨床研修の3年間、それから大学院に行くとしたらさらに4年間。考えてみると、医学部に入って、学びが終わるまでには15年間という長い歳月があります。医学部入学時、あるいは受験するときに考えていた進路のイメージは、卒業後にガラリと変化するかもしれません。それまでの間、自分に合った仕事は何なのか、よく考えてみるといいですね。

医学生は、将来臨床医となることが多いとは思いますが、それ以外にもこれだけたくさんの進路があります。いろいろなことを体験して、検討してみて、悔いのない進路にぜひ進んでいただきたいです。